メッセージ

高度先進医療福祉社会を目指して

倉智 嘉久 〈MEIセンター長〉
高度先進医療福祉社会を築くことは、我が国の重要課題のひとつです。この課題を解決するためには、新規融合科学である「臨床医工学・情報学融合領域」の社会に適合した発展が必須であり、この領域の人材を育成することが急務であります。大阪大学臨床医工学融合研究教育センター(MEIセンター)は、大学内の部局横断的連携と、地域、国内、海外の教育・研究機関との連携により、大学院博士課程前期および後期学生を対象とした当該分野の人材育成のための革新的な教育プログラム開発、および社会人再教育プログラムの開発を行っています。これによって、最先端の工学・情報科学と医学・医療の双方に精通し、社会ニーズ・医療ニーズ・患者ニーズを理解した医療技術者など、この領域の高度技術者と該領域の指導者となる人材をシームレスに育成する教育プログラムが実現することになります。2007年度から開始するMEIセンターのグローバルCOE「医・工・情報学融合による予測医学基盤創成」は、こうしたMEIセンター教育プログラムの博士後期課程学生に対する実践型教育を基盤とし、その上で「フィジオーム・システムバイオロジー」に特化した人材育成と研究を格段に推進するものです。フィジオーム・システムバイオロジーの展開は、経験と予想に基づくこれまでの医学を、時間軸を考慮した動的メカニズムと定量的論理に基づく治療効果の予測能力を兼ね備えた「予測医学」に変革すると考えられます。
予測医学は国民の健康と福祉の増進に大きく貢献します。さらに、新規薬物や医療・福祉機器のin silico 開発および治験の実現は、製品の信頼性や安全性向上と開発の高効率化・抵コスト化に直結し、今後の知識集約産業にも多大な影響があると考えられます。私たちのグローバルCOE で実施するプロジェクトがこれまでのMEIセンターの活動と有機的に連携することで、高度先進医療福祉社会の実現にまた一歩近づければと考えています。

グローバルCOEを通じた人材育成を

野村 秦伸 〈グローバルCOEプログラム拠点リーダー〉
統合科学としてのフィジオーム・システムバイオロジー研究の推進には、研究プロセスと情報の集約、また国際的な戦略的協調と情報発信ができるシステムが重要な役割を果たします。また、この新規融合研究が、従来の医学・生命科学を、予測医学・予測生命科学に変革することは確実です。私たちのグローバルCOEプログラムで構築する生体シミュレータやデータベースは、段階的かつ継続的に、医療における診断・治療の意思決定、治療効果予測、新規治療薬や医療福祉機器開発の方向性の予測に導入されていくことになるでしょう。すなわち、臨床医の診断・治療や、創薬、医療福祉機器開発の意思決定に際して、生体シミュレータ・データベースが、メカニズムに基づく可能な選択肢を論理的・定量的に提示できるようになれば、これまで専門家の経験に基づいて行われてきた意思決定がシステム化され、予測医学へと発展することになります。これは意志決定の最適化に繋がり、要素還元的な実験科学データの膨大化がもたらす医療、創薬、医療福祉機器開発などの経費の増大に歯止めをかけ、その適正化に大きく寄与するでしょう。このような、人の生命・健康に関わる知的生産過程の意思決定システムの構築に、この分野の日本拠点として深く関わることが、それが実効的に稼動する段階で、その運営とそこから生み出される価値に対してイニシアティブをとるためには不可欠です。このグローバルCOEでは、そのために必要な組織的研究・チームワーク研究・国際共同研究を推進し、それを通じてわたしたちの将来を支える人材育成を推進したいと思っています。皆様のご理解とご協力、どうぞよろしくお願いいたします。