本シンポジウムは、医学、工学、数学といった異なる分野でご活躍されている先生方が一同に介して、感覚機能、特に聴覚機能に関して様々な面からアプローチされている研究が紹介された。まずはじめに、オーディエンスのバックグランドが多様であることに配慮いただき、イントロダクションとして聴覚機能の解剖学的、生理学的な側面について判りやすく概説頂いた。そのため、その後の公演を自然に聞くことができた。この点は非常に良い一面であったと感じた。
さて、このシンポジウムは、内耳機能、人工内耳、感覚中枢の3つの大きなテーマから構成されていた。内耳機能に関しては、生理的実験データをベースに、内耳蝸牛の数理モデルを構築する試みや、そのシミュレーション結果が紹介された。また、蝸牛に関しては、情報伝達効率などの点からモデル化を試みる研究なども紹介され、非線形共振器が音という信号を効率よく伝達するためのキーとなる可能性が紹介された。続いて、人工臓器として最も成功している人工内耳の医療現場での現状、その将来展望などをご紹介頂いた。一方で、人工内耳への応用を目指した新しいデバイスの開発の現状、そしてその今後の展望が紹介された。更に、聴覚中枢機能で重要となる音検出に関する最新の研究に関して御紹介いただき、最後は、複数の周波数成分を有する音の中から、注意を向けたときの音の選択性(周波数選択性)をどのように実現するのかという問題について概説頂いた。
このシンポジウムは、聴覚機能に限定はされているが、その内容は非常に幅広く、密度の濃いシンポジウムであった。このため、予定されていた時間を大幅に超過したが、その多くは活発な議論のために費やされた。



